新しいツールやサービスを導入した際に、なかなか社内での利用が浸透しない——生成AIの導入においてよくある課題の一つです。この課題に真摯に向き合い、社内の選抜メンバーを対象に生成AI研修を行うことで、約2倍のAI利用率向上を実現したのが、リケンテクノス株式会社です。本プロジェクトは、Cynthialyのパートナーであるスミセイ情報システム株式会社からの紹介により実現しました。「リケンテクノス特化型の生成AI環境の構築」を目指し、同社が描いた3段階のロードマップと、その鍵を握る選抜メンバーの選び方とは。今回は、同社のDXや生成AI活用の推進を担うシステム開発部の担当者に、生成AI研修の実施に至った背景から研修の成果、今後の展望までお話を伺いました。なかなか社内での利用が浸透しない。生成AI導入における課題―どのような体制で、生成AIの導入を推進されてきたのでしょうか?私たちは、業務をもっと効率的に進めるために、生成AIをはじめとする新しいITを積極的に取り入れていきたいと考えています。使える技術はどんどん活用して、仕事のスピードと質を高めていく――そんな思いで取り組んでいます。この考えのもと、4年前にITロードマップを作り、経営層へのヒアリングを通じて「情報システムに何を期待するか」を整理しました。さらに2022年にはDXワーキンググループを立ち上げ、各本部からメンバーを集めて、現場の視点で必要な仕組みを検討してきました。DXの推進やAI活用は、会社として目指す方向性と現場のアイデア、どちらも大切です。バランスを取りながら、業務改革を実現するための仕組みや基盤を整え、そのうえで新しい技術を誰もが使いやすい環境をつくっていくこと――それが私たちの目指す姿です。各部門でもDXの取り組みが進んでいます。技術部門では研究開発におけるAIの活用を進め、品質管理部門では、膨大な品質データの集約と統計解析を通じて品質管理の高度化を図るなど、一歩一歩デジタル化を進めています。そんななか、ここ数年で生成AIが急速に進化し、従来ではできなかったことが可能になってきました。膨大な情報を瞬時に処理し、アイデアや知見を引き出す力は、業務効率化だけでなく、新しい価値を生み出す可能性を秘めています。こうした背景から、私たちは生成AIの導入を決めました。これは単なるツールの追加ではなく、日々の業務をよりスムーズにし、効率を高めるための取り組みです。―生成AIの導入を進める中で、研修の実施に至った背景を教えてください。生成AIに限らず、新しいツールは全体で活用されるようになってきています。ただ、まだ本来期待しているレベルまで業務効率化に結びついているとは言えません。データ分析やコミュニケーションのためのツールも導入していますが、もっと効果的に使える余地があります。導入時には全社向けの説明会を開きますが、それだけでは「日常業務で自然に使える」状態にはなりません。社員が自分の仕事の中で「こう使えば便利だ」と思えるところまでサポートできていないことが、今の課題だと考えています。3段階の生成AI活用ロードマップを策定。鍵を握る「選抜メンバー」の選び方―生成AI研修の実施にあたり、どのような計画を描いていたのでしょうか?これまでの経験から、新しいツールを導入しても「思ったほど活用が進まない」ことがあると感じていました。そこで、Microsoft Copilotを導入する際には、浸透を確実にするため、導入と同時にロードマップを策定し、段階的に展開する計画を立てました。このロードマップは「生成AI利活用ガイドライン」にも記載し、適切な利用方法や注意事項とあわせて、今後どのように活用を進めていくかを示しました。これにより、社員との共通認識を形成しました。ロードマップでは、第1段階:「まず使ってみる」第2段階:ワークショップで「具体的な使い方を学ぶ」第3段階:「リケンテクノスに特化した生成AI環境を構築する」というステップを描いています。―第2段階の取り組みとして、生成AI研修を実施されたわけですね。 研修参加者はどのように選定されたのでしょうか?業務フローベースで具体的な活用方法を学ぶことで、「どこに使えるのか」を実感してもらい、各部門での展開につなげたいと考えました。そのため、各本部から選抜メンバーを集め、研修を実施しました。研修では、実際の業務で活用できる場面を体験し、その気づきを部門に持ち帰って広げてもらうことをねらいました。さらに、第3段階で予定している特化型AIの構築に向けて、どの部門の、どの業務に生成AIが適しているのかを把握する機会にもなると考えました。あえて特定の部門に絞らず、各部門の業務に精通したメンバーを幅広く集めることを重視しました。研修企業の決め手は「柔軟性」。研修にはフィードバックを即時に反映―研修企業を選ぶ際、どのような点を重視しましたか?当社では、業務フローベースで「どのように使えばいいのか」「どの業務に使ったら効率が上がるのか」を理解できる研修が必要だと考えていました。社員が自分たちで活用方法を見つけるのはハードルが高く、具体的な業務に沿って使い方を学べる研修でなければ、実践につながらないという課題がありました。こうしたリアルな状況を理解し、業務での実践に導いてくれる研修パートナーを探していたところ、Cynthialyさんに出会いました。今回のご縁は、スミセイ情報システムさんからのご紹介です。AI活用に課題を抱えていた当社に対し、顧客ごとに柔軟なカスタマイズ対応ができるCynthialyさんを紹介してくださいました。―他社との比較検討はされましたか?他社との比較検討は行いましたが、Cynthialyさんを選んだ理由は、当社のロードマップや課題に合わせて柔軟に対応していただけたことです。10月に相談を開始し、年明けから3月までという短期間での研修実施を希望していましたが、他社はパッケージ化されたプログラムが多く、柔軟な対応が難しいと感じていました。スミセイ情報システムの中谷さん、Cynthialyの渡邉さんをはじめ、チームの皆さんには、研修内容の柔軟なカスタマイズやさまざまな相談に応じていただきました。その歩み寄りが大きな決め手となりました。さらに、第3段階の特化型AI構築に向け、この研修で各部門の業務に適した生成AIの活用方法を理解し、将来につなげられるという期待を持てたことも後押しになりました。―研修プログラムを組み立てる中で、工夫された点はありますか?全3回のプログラムでは、Day1からDay3まで毎回アンケートを実施し、参加者の理解度や要望を確認しながら内容を柔軟にカスタマイズしていただきました。講師の説明スピードや用語の解説、ワークの進め方など、フィードバックを次回に反映することで、参加者の理解度に合わせた研修を実現できたと思います。さらに、事前に「生成AI活用レベル診断」を行ったことで、参加者のスキルに応じた提案や講師のサポートが可能になり、より効果的な研修につながりました。管理職から若手メンバーまで。研修で得られた「たしかな手応え」と「新たな課題」―研修の参加者からはどのような反応がありましたか?全体としては「活用の糸口を見出せた」という声を多く聞くことができ、実施してよかったと感じています。特に、埼玉工場では「生成AIの特性を理解し、業務と結びつけて具体的な活用イメージを持てた」という反応があり、現場で働く方々がイメージを描けたことは大きな成果でした。営業部門では、同じ部門のメンバーでグループを組み、日頃の業務を話題にしながら盛り上がり、互いにアドバイスし合う活発なディスカッションが行われました。一方で、参加者の立場や経験によって理解の深さに差が出た場面もありましたが、広くメンバーを募ったことで多様な視点が集まり、今後の活用に向けたヒントを得ることができたと考えています。―研修を実施したことで、どのような成果がありましたか?Copilotの利用率は研修前と比べて約2倍に向上しました。さらに、研修前はほとんどいなかったレベル3・4に到達したメンバーが着実に増えています。一方で、レベル1・2にとどまったメンバーも、業務での活用の糸口をつかんだという声が多く、今後さらに理解を深めていけると期待しています。将来的には、レベル5に到達するような高度な活用事例も生まれてくることを目指しています。―今後の課題として捉えていることはありますか?研修を通じて、生成AI活用の糸口を見出したメンバーも多く、今後はこの気づきを各部署に広げていくことが重要だと考えています。展開を進めるためには、主体的に動ける人材の育成や、定着を後押しする仕組みづくりが必要です。特に、レベル3・4に到達したメンバーを中心に、アンバサダーとして推進役を担ってもらい、ユースケースの作成や特化型AI環境の構築を進める体制を整えていきたいと考えています。次なる挑戦は「データ基盤構築」へ。DXを見据えた生成AI活用―生成AI活用について、どのような展望をお持ちですか?当社では、ERP(基幹システム)のグローバル統一やデータの統合・集約を進めています。目的は、グローバル全体でシナジーを生み出し、一体となって最適化を図ることです。そのうえで、統合されたデータやナレッジを活用し、結果としてAIも業務に生かせる環境を整えていきたいと考えています。生成AIは、単なるドキュメント作成にとどまらず、統合されたデータを効率的に検索・整理し、業務のスピードと精度を高めることに貢献します。こうした取り組みを積み重ねることで、必要な情報を迅速に提供できるようになり、意思決定をサポートする仕組みへと発展していくことを目指しています。―今後、Cynthialyに対して期待することがあれば教えてくださいDXを実現するためには、ITリテラシーの底上げや業務プロセスの改善が不可欠です。どのような体制を構築し、スキル強化に取り組んでいくかは、当社としてしっかり考えていくべき課題だと認識しています。そのうえで、さまざまな教育プログラムや研修の提案をいただけることを期待しています。役割やスキルレベルに応じた柔軟なプログラムが必要だと考えており、今回の研修で得られた知見をもとに、より効果的なアプローチを一緒に描いていければと思います。リケンテクノス社では、研修後にAI利用率が約2倍に向上し、参加メンバーによる社内展開が進んでいます。同社の成功要因は、3段階のロードマップによる計画的な導入、業務フローベースの実践的な研修、そして各部門から選抜されたメンバーによる展開体制にあります。今後は定着化支援とアンバサダー人材の育成を進め、データ基盤整備と連携した全社的なDX推進を目指しています。社内の生成AI導入や研修にご興味がある方は、まずはこちらからお気軽にご相談ください。お問い合わせはこちら